学校保健フォーラム1999-10子どもの視力低下を防ぐ

見る「心」を育てる

近藤章(名古屋自由学院短期大学教授)

作文教育の決まり文句に,「よく見て書く」というのがある。そのために子どもたちを学校園などに連れていって,「さあ,よく見て書こう」と呼びかける。ところがこれが,なかなか思いどおりにいかない。よく見て書くのは,口で言うほど易しくはないのである。

困って,花びらは? 葉っぱは? などと言ってみる。すると少しずつ,「花びらは黄色です」などと書き始める。が,こうしてできあがった作文は,どこかぎこちない。訊かれたことへの答えを,取って付けたように並べたものが多い。

―歩踏み込んで,「さわってみてごらん。鼻を近づけてごらん」などと言ってみる。花壇の係には勘弁願って,「折ってみてもいいよ」と言ったりする。すると,これまでと様子が変わり始める。書きあげる文章も,生き生きとして具体的になる。

これに類した経験をお持ちの方も,多いにちがいない。

ものをよく見るには,見ようとする構えが必要である。子どもたちに即して言えば,からだを使ってそのものに働きかけることが大切であるらしい。

昔から「心ここにあらざれば見れども見えず」と言う。目に映っただけでは,見えたのではない。働きかける「心」があってはじめて,ものは見えると言うのである。

私たちは子どもたちに,見る方を育てようとする。これはとりもなおさず,見る「心」を育てることである。目に映るものを見て取り,見定め,見きわめようと,ものに働きかける姿勢を育てることである。

これがひいては,目に映らないものをも見ることができるカ,想像方を育てることにtつながるのだと思う。
 

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