| 学校保健フォーラム1999-4
「健康診断はなぜ大切なのか
」
健康診断の意義と活用
衛藤 隆(東京大学教育教授)
春4月,新学期になると日本中の学校で健康診断の季節を迎える。健康に関するスクリーニング検査として重要な行事なのであるが,ただ決まりに従って行う行事として「やらされている」感覚で受け取られている場合もあるのではないかと思う。
明治時代の学校保健について書いてある書物を読むと,日本では近代的学校制度が出来た頃からそれほど長い年月を経ずに,今日の保健管理的活動の原初的なものが出来はじめていることに驚かされる。明治21年(1888)には活力検査と呼ばれる健康教断の原型が文部省直樽学校すペてにおいて行われるようになった。その後,身体検査となり,さらに昭和33年(1958)の学校保健法制定公布により健康診断となった。以後,時代に即した内容の改正が何度かなされ,現行のものは平成7年度に一部改正されたものである。
人間の健康は単に天から賦与されたものではない。生態系の一員としてヒトは常に病原微生物等に脅かされ,また自らの生活習慣に潜む藷要因がその人の健康状態を良くも悪くもするのである。健康は,絶えずこのような緊張感の中で,自らが主体的に切り開いていくことにより得られるものである。ヘルスプロモーションとはこの辺りのことをいっている。
健康診断は活用の仕方によっては,幼児,児童,生徒,学生,職員が自らの心身の状態,変化,疾病・異常に気づく横合となり,また自身の生活習慣(食,運動,睡眠・休養等)や健康について考える重要なきっかけとなり得るものである。健康診断項目や記載の仕方等は法律や規則で定められているが,それは必要な最小限のことであって,学校の構成員一人ひとりにとっての意味が十分に理解され活用される必要がある.今日では,集団の健康管理としての側面に加え,個の健康に関わる意味′ブけが大切になってきているのではないかと思う.
現行の仕組みは決して十分ではなく,障害や慢性疾患を持った人々の健康管理を含め,きめ細かに検討すべき課題はまだたくさんある。十年一日のごとく見える健康珍断も,現代的な意義を考え,活用することを改めて提案したい。
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