もやしは植物名ではなく、豆類や穀類などの種子を発芽させて、伸長させたものをさします。芽やし、萌やし、生やしという意味で使われました。ブラックマッペを代表に、大豆もやし、緑豆もやし、アルファルファもやしのほか、そば、しそ、ひまわり、からしなの種子などでも作れます。また、葉が緑色になるまで育てる豆苗(えんどう豆の新芽)、ブロッコリーのもやしも豆や種子の栄養を備えているうえに、野菜のビタミンを含むもやしで、料理の主役になることは少ないが、栄養価の高い名わき役として食卓に欠かせません。
もやしの歴史
人類がはじめて、植物の種子が発芽することを発見し、それを発芽させることに成功したことからもやし栽培が始まったと思われます。中近東地方(バルカンや西南アジア)、東部地中海沿岸から東方イラク地方、トルキスタン地方を経て、中国地方に渡り、それが広く伝播したというのが有力な説です。
日本では、最も古い薬草の本『本草和名』(ほんぞうわみょう)に書かれている「毛也之」(もやし)が薬用として栽培されていた(平安時代)記録としてあります。また、江戸時代の『和漢三才図会』(わかんさんさいずえ)によると、黒豆をもやしにして、芽が5寸ほどの長さになったところで乾燥させ、よくいって服用すると、しびれやひざの痛み、筋のひきつりなどに効くと記されています。
もともと主に薬用として用いられていたもやしですが、明治末期ころから大都市に専業生産者が現れて中華料理店に納品されるようになり、次第にもやしの風味が庶民の味として親しまれるようになってきたのです。つぎのような逸話もみられます。
南北朝時代には、楠木正成が千早城や赤坂城で籠城の際、将兵に豆の芽を食べさせ敵陣の重囲に耐えたというもやしにまつわる話も伝えられています。
新しくは、スエズ問題が起こったとき、アラビアに上陸した英軍が、野菜の欠乏に困り、本国の栄養学者に救援を依頼した。その結果本国で研究のうえ大豆を送り、これを「もやし」にして食べさせたという事実もあります。
明治40年ころから東京、横浜、大阪、神戸など港のある大きな都市でもやしを作る業者が多くなりはじめ、その後、野菜の栄養価が大きく取り上げられ、清浄野菜とか近代的な食生活などが、台所を守る主婦の声としてあがるようになって消費は日ごとに増え、業者の数も増え『もやし』づくりが伸びてきました。
昭和21年から24年10月までの間は、原料の緑豆、大豆などの輸入がない時代で、業者は仕事を休止しなければならなくなりました。また、当時は緑豆もやしの栽培だけでしたので、緑豆もやしは日持ちせず、夏にはもやしは栽培しなかった時代でした。
栄養成分
多くの種類があるもやしですが、共通していえるのは、乾燥した状態では活動を休止しているが、豆は水分を与えると酵素の働きで、新陳代謝が急激に変化します。炭水化物は糖質にかわり、糖度を計ってみると、もやしの上部が多く5.4?7.8、下部でも4.8?5.4もあり、もやしのうま味は糖度でわかります。飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸に、たん白質はアミノ酸に変化します。大豆にはほとんど含まれなかったビタミンCが、発芽の際にはとても増えます。また、たん白質は豆類に比べ、消化吸収しやすい形になって含まれます。ビタミンB1、アスパラギン酸、カルシウム、カリウム、鉄、食物繊維なども豊富です。
アミラーゼという消化酵素が生まれるのも特徴で、胃腸機能を整え、食欲不振を解消します。豆の消化の悪さが難点だったものが、もやしとなって、胃腸にやさしい食べ物に変わってしまうのです。食物繊維は腸の働きを助け便秘や大腸がん、動脈硬化、糖尿病など生活習慣病の予防に効果的です。
もやしの種類と主な働き
大豆もやしは大豆を原料としたもやしで、太くて長く、独特の歯触りが特徴で,リジン、トリプトファンなど、必須アミノ酸を多く含んでいます。肝臓機能を高めてからだに活力を与えてくれ、疲労回復になります。
緑豆もやしはわが国では最も多く出回っている種類です。軸が太く、水分が多く、甘味があり、しゃきっと、みずみずしい。ビタミンCは100g中16mgと最も多く、ビタミンCは生命力の源で、コラーゲンの生成を促し、肌のトラブル・スキンケアにもなります。
ブラックマッペもやしは、黒緑色のケツルアズキが原料で、緑豆もやしよりも細く、もやし独特の青臭さが少ない。ビタミンCは12mgと緑豆より少なく、亜鉛、食物繊維が多い。美肌効果、便秘改善、動脈硬化予防に役立ちます。
アルファルファもやしは、ムラサキウマゴヤシという牧草の種子から作られ、もやしの中では唯一カロテンを含んでいます。生食できるもやしなので、サラダにしrビタミンCの損失も少なくたくさん食べられます。食物繊維の働きによる便秘改善にも効果的です。
豆苗はえんどう豆の新芽のことです。カロテンが豊富で、免疫機能を強化し、活性酸素の生成を妨ぎます。