■□ 自分を好きになるということ □■
諸富 祥彦 千葉大学教育学部助教授
私は、今日のさまざまな教育課題の中で最も重要なものは、子どもたちの「自己肯定感」(自分を大切にしたい、自分の人生を大切に生きたいという気持ち)を育てることだと思っている。なぜか。近隣の公立中学校でスクールカウンセラーをしている私のもとには、さまざまな問題や悩みを抱えた子どもたちが訪れる。不登校、いじめ、友人関係のトラブル、仲間集団からの排斥、リストカットなどの自傷行為、摂食障害、非行、頭痛・腹痛などの身体症状……。
カウンセラーである私は、隣の部屋(保健室)の養護教諭と連携して子どもたちの心とからだをケアしていくのであるが、そこで私が実感するのは、一見多様であるように見えるこうした問題の大半に共通する要因があるとすれば、それは「自己肯定感の低さ」ではないか、ということである。
ある無気力な男子高校生はこう訴える。「おれ、勉強もスポーツも、趣味も、何にもハマれるものがありません。おれなんてどうせ大した人生を送れるわけでもないし。そう思うと"生きているっていう実感"感じられないんです」。リストカットの常習である彼は、自分のからだを切り刻んで血が流れていくのを見ている瞬間にだけ、生きている実感を得られるという。
母親の高い期待にこたえることができず、自分を責め続け、やはり自傷を続ける中2女子はいう。「大好きなお母さんの気持ちにこたえることができない"ダメな私"。そんなダメな私を傷つけていると、気持ちがスーッと落ち着いてくるんです……」。
自傷や万引き、ドラッグ、シンナー、無防備な性的交遊をしている時だけ「気持ちがスーッと落ち着いてくる」と。こうした自滅的な行為の背後に、私は子どもたちの内的な空虚さと自己肯定感の低さを見る。
「自分を好きな子ども」を育てたい……。
※文献:諸富祥彦『自分を好きになる子どもを育てる先生』(図書文化)
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