■□ 納豆は健康食品の代表格 □■
高橋敦子 女子栄養大学教

 納豆の起源・種類 
 納豆は麹かび菌で醗酵させ、貯蔵性を持たせるために加塩した大徳寺納豆、浜納豆、塩納豆(寺納豆)と、加塩しないものに、納豆菌を使った糸引き納豆とクモの巣カビを使ったインドネシアのテンペがあります。
 納豆の語源は平安時代に寺院でお供物を納める「納所」にいる僧が作っていたのが由来とされています。納所は台所のような場所であったともいわれています。この時代の納豆は中国から伝わった「くき」に似た塩納豆、寺納豆のようなまったく粘りのないものでした。
 納豆の原形は弥生時代に存在したとの説もありますが、文献上では『新猿楽記』(1058?1065年?)に食い意地の張った酒好きの女性が好んだ食べ物として納豆が出てきます。これも塩納豆の類と思われます。糸引き納豆の誕生は平安時代の後期の武将源義家とともに語られる諸説があります。源義家が奥羽の豪族、清原家衡を金沢柵で攻略した「後三の役」(1083?1087年)の戦いで、ウマの飼料として豆の煮たものを村人に用意させました。急な命令なので、とりあえず熱い煮豆をわらに詰めて差し出しました。数日たって包みをあけると、わらに潜む納豆菌が繁殖して豆が糸を引いており、それを口にした源義家がおいしさに驚いたというのです。
 町民文化が隆盛をきわめた江戸時代は、豆腐屋と並んで、朝早くかけ声をかけながら歩く納豆売りが登場しました。この時代には、ご飯とみそ汁に漬物といった朝食が定番となっており、納豆は刻んでみそ汁に入れて食べていたようです。1900年代に入ってから納豆菌の研究が進み、昭和に入ると軍隊の携帯食に用いられました。現在では栄養面での効用が広く知られて評価され、これまで需要の少なかった都道府県の消費量も年々増えつつあります。
 
 納豆菌の働き
 納豆菌は適温と湿度さえ与えれば、強力な繁殖力を発揮し、1個から数十億個に増えます。また、納豆菌は体内に取り入れられた後もすぐには死なないという特徴があります。現在の製法では、納豆菌を加熱した大豆に直接散布しますが、昔は、わらについている天然の納豆菌を利用しました。わら1本には約1000万個の納豆菌が付着しており、それが強力なたん白質分解酵素を出し、大豆を発酵させました。納豆がからだによいということは、大豆の栄養分に加えて、発酵による新たな成分がすぐれているからです。今市場に出回っているほとんどはパックの中での発酵です。大豆が納豆に変化する過程で、発酵に携わるこの納豆菌は、多くの有害菌が熱で死滅するのに反して熱に強いのが特性です。また大腸菌やチフス菌に対しても強い抵抗力を持っているため、O-157などの食中毒に効果があると注目されたのも記憶に新しい事実です。
 
 栄養成分と働き 
 栄養成分のたん白質は16.5g、脂質は10.0gとゆで大豆とほぼ同量です。カルシウムは90mgと1.3倍、鉄は3.3mg、食物繊維は6.7gしかも水溶性食物繊維が多く、そのため糖尿病や高脂血症予防に役立ちます。ビタミンB1、B2も豊富で、口内炎や貧血を防ぎ、美肌効果もあります。
 ナットウキナーゼは血栓予防に効果があります。血栓は血管中にできる血のかたまりで、動物性脂肪のとり過ぎによって悪玉コレステロールが増えるのが原因です。血液中に血栓ができて血液の流れが妨げられます。そのため心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こします。この血栓を溶かしてくれるのが「ナットウキナーゼ」です。ナットウキナーゼは納豆のネバネバに含まれる酵素で1986年に須見洋行博士が発表されました。一般に血栓ができ、心筋梗塞や脳梗塞など、発作を起こしやすいのは午前3時から4時といわれています。ナットウキナーゼの効力は10時間ほど持続するため、夕食に納豆を食べるのがよいようです。酵素が十分に働くようによく混ぜて粘りを出し、含硫化合物である「アリシン」を含むねぎと薬味を一緒に食べれば、さらに血液サラサラ効果が増します。人間のからだ自身もウロキナーゼという血栓溶解酵素をもっていてナットウキナーゼがウロキナーゼを活性化することもわかっています。ですからナットウキナーぜには二重の血栓防止作用があることになります。一方、心臓弁膜症で人工弁を付けている人、心臓バイパス手術をした人、手足などに人工血管をつけた人に投与されるワルファリンという薬があります。ビタミンKの働きを抑えて、血栓ができるのを防ぐ薬です。この薬の世話になっている人は、納豆は食べてはいけない食品です。それは、納豆にはKが多く、ワルファリンという薬と納豆の組み合わせがよくないからです。
 もうひとつは、大豆の有効成分の「イソフラボン」が骨粗しょう症に効くこと、納豆に豊富なビタミンK2も骨粗しょう症の治療薬に使われるくらいです。世帯別の納豆消費量と大腿骨頚部骨折との相関を調べた結果によると、納豆消費量の多い世帯ほど骨折が少ないことがわかっています。納豆が血液中のビタミンK2 濃度を高め、骨折防止に役立っているのです。
 日本型食品の中ではビタミンB2を含む食品は少ないので納豆は手軽にB2を補給できる食品といえます。ゆでた大豆と比べると納豆は6倍の量のビタミンB2が入っています。ビタミンB2は肝臓の機能を高めて、子どもの成長発育を促進し、目、皮ふ、粘膜を守るビタミンで、いつまでも若々しく元気でいるためには納豆はよい食品です。
 
 




 
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